北ア東部 横通岳、常念岳 2010年7月24-25日

所要時間
7/24 4:42 駐車場−−5:08 登山相談所(車道終点) 5:15−−7:31 最終水場−−8:09 常念乗越(常念小屋) 8:42−−9:45 横通岳 11:00−−11:33 常念乗越

7/25 3:58 常念乗越−−4:47 常念岳 5:36−−6:05 常念乗越 6:30−−6:48 最終水場−−8:14 登山相談所(車道終点)−−8:31 駐車場


概要
 一ノ沢から往復で常念小屋で幕営。足の強い人なら常念岳日帰りが充分可能なコースだが、下界が余りに暑いのでのんびり天上界で涼むことにして1泊した。一ノ沢沿いの登山道は枝沢を何本も横断するので水場に困ることは無く、最終水場まで水筒に水を入れる必要はない。ただし、常念小屋の水源には道が無く(水源はさほど遠くない)水汲みに行けないため、幕営者は水を購入することになるが\200/リットルと通常の倍額のため最終水場で必要量を担ぐのが良い。

 横通岳は登山道は巻いているが東鞍部から明瞭な踏跡あり。ケルンと三角点があり森林限界を超えて展望良好。ここまで上がると立山剣が見える。常念岳も言うまでも無く展望良好で、日曜朝は南ア深南部の黒沢山まで見えた。槍の展望も素晴らしい。

地図クリックで等倍表示



 梅雨が明けてから晴れて暑い日が続き、今週末もクソ暑い晴れの予報だ。こんなときは涼しい天上界へ逃げるのが一番で、先週は南アだったから今週は北ア方面とした。場所はいろいろ考えたがしばらく登っていない常念岳にした。ここなら豊科ICから近いし一ノ沢コースなら所要時間も短く、日曜日の帰宅は中央道が渋滞する前にできるだろう。もちろん展望も期待してよい山だ。北アでも東に突き出ているので槍穂の展望台として最適だ。一ノ沢から常念乗越は2,3年前の残雪期に中山をやったときに歩いているが、常念岳は10年くらい前に登ったのが最後だ。

「公式」駐車場。案内看板あり 「公式」駐車場より下の駐車場

 豊科ICを降りて適当に西に向かい、そろそろ山麓に近づいたところでロードマップを見て場所を確認、常念岳登山口の案内標識を確認し、県道から西に入って標識に従って進んでいく。ここは数年前に中山に登ったときに通ったはずだが既に記憶が薄く、前回通行止めだった別荘地のカーブと駐車場だけよく覚えていた。今回は道路は問題なくゲートは開いていた。駐車場はそこそこ埋まっていたが空きがあり、ここに置いてもいいのだが夜間に車の出入りが多くて安眠できないと判断、距離にして100mほど下ったところにある駐車場に車を置くことにした。ここは夜間はみんなスルーしていくので気持ちよく寝られた。

横通岳か? 「公式」駐車場より上の駐車スペース
もっと上の駐車スペース。ここが最後 沢沿いの私設?小屋

 上の駐車場が埋まったのが、朝飯を食っていると車がこちらに戻ってくるようになった。ザックを背負ってこの駐車場ではトップで出発、既に上の駐車場から歩きだしている人の姿が見える。車道を歩いていくと正式駐車場の他にも駐車余地は2箇所ほどあり、合計10台くらい置けそうだった。まあ、歩きの短縮時間は数分といったところだろう。大きなカーブで沢の袂に小屋があるが、これは一般開放されているわけではない。

車道終点 車道終点の登山相談所
しっかりした登山道 一の沢に接近すると休憩する人の姿も

 その先の直線道路のどん詰まりが車道終点で登山相談所なる小屋とトイレが建っていて、既に人が詰めていた。ここで登山届けを書いてトイレを済ませて出発だ。一般登山道なので何の問題も無く、暑さ対策で半ズボンでも足に触る藪がない。一ノ沢の左岸に沿って登山道が続き、いくつもの支流と交差するので水は豊富でザック横にくっつけたドリンクに手をつける必要はなかったし、時々顔や腕を洗って汗を洗い流してさっぱりできた。夏場歩くにはいいルートだ。

いくつもの支流を越えるので水は豊富 残雪期はデブリの山だった場所
一ノ沢に残雪現る。これより上部は左岸の巻道 残雪期はこの谷を登った
左岸巻道 一ノ沢を渡り尾根に取り付く

 前回は残雪期に歩いて烏帽子沢を越えた標高1750m以上で雪が連続するようになったが、当たり前だが今の時期に雪は無い。前回は膨大なデブリで埋もれた標高1900mの沢出合もすっかり雪は消えており、あの情景が嘘のようだ。いったん右岸に渡って再び左岸に戻るとその先で一ノ沢に残雪が見られるようになり、登山道は高巻きを始める。残雪期は谷をそのまま上がって支流の谷を詰めたのだが、夏道はそうではない。高巻が終わって一ノ沢に下ると沢を横断して尾根に取り付く。ここが最終水場で標高は2150mを越えていた。

一ノ沢を渡ると最終水場 シラビソ樹林をジグザグに登る

 この後は鞍部までシラビソ樹林のジグザグ道が続く。尾根に沿って一気に登るのかと思ったらそうではなく足に優しいルート取りだ。途中、2箇所にベンチがあるが樹林で展望はよくない。最後の最後になってやっと樹林を抜けて展望が開けると常念岳がでかく聳えている。今日登ってもいいのだが、もう雲が高くなり始めて遠くの山は隠れ始めているだろうから明日朝一番に登る予定なので今日はパスだ。

常念乗越から見たパノラマ展望(クリックで拡大)
常念乗越 常念乗越から見た槍ヶ岳
小屋前のテント場 大天井岳方向に少し離れたテント場

 樹林が切れて邪魔者皆無な常念乗越に飛び出し、久しぶりに常念小屋を目にする。まだ時刻は8時ちょっとでテント場には1張あるだけ。登りで幕営装備らしき単独男性に追い越されたが、その男性はこれからテント設営を始めるところだった。テント場は小屋のすぐ目の前のロープに囲まれた区画で案内看板が立っており「テントはロープ内に設営するように」との文言が書かれていた。常識的にはこれを見るとテント場はここだけと判断するだろう。しかし有名どころとしてはいかにも狭く、せいぜい10張強だろう。こんなに少ないはずはないと不思議に思ったが、こことは別に少しだけ大天井岳方面に歩いたところにもっと広いテント場があった。今回は到着が早く空き区画が多くて平らな場所を確保できたが、平坦地は5,6張で埋まってしまうので広い場所のテント場の方が利用価値が高いだろう。そっちのテント場の案内が小屋に近いテント場に出した方がお客に親切だろう。

 小屋で幕営手続きを済ませ(\600/人/日 トイレ代込み)、一通り説明を聞いて驚いたことが。水の料金がなんと\200/リットルだった。ここの水源は一ノ俣谷に少し下ったところにあり、歩いて往復しても大した労力ではないからポンプアップするための設備費も大した値段ではないだろう。少なくとも北岳山荘よりは安いのは間違いない。北岳山荘でも\100だったからどうみても値段相応とは言いがたい。水源まで道があれば汲みに行くのだが、今は一ノ俣谷の道は廃道で小屋から南は立入禁止になっているから藪漕ぎでもしないかぎりは水場に行けない。これを知っていれば最終水場で必要量を汲んできたんだけどなぁ。今回は帰りの行動水は不要なので2リットルで充分だろう。

常念乗越から見た中山 常念乗越から見た穂高市街方面
常念乗越から見た横通岳(右側のピーク) 常念乗越から見た槍穂

 テントを設営し終わってやることも無くなる。涼むのが目的なのでこのままごろ寝でもいいが、好天で思いっきり日が当たって暑すぎるため、せっかくだからと横通岳を往復することにする。ここに登ったのはたぶん10年くらい前だろう。登山道は巻いているが問題なく登れた記憶がある。飯と少しの水を持って出発。

森林限界を超える 岩稜の道
振り向けば常念岳 横通岳南側の鞍部

 僅かに登ると低い樹林帯に突入、日陰に入って涼しい。ここで昼寝した方が良さそうだが寝られるような開けた場所は登山道以外にない。すぐに樹林帯が終わって森林限界を突破、寝たハイマツが登場しアルプスらしくなる。石とハイマツの稜線を登り、小ピークを越えると残雪が残る小さな鞍部で登山道と分かれて横通岳山頂に続く踏跡に入る。標識等は無いが明瞭な踏跡なので分かるだろう。

横通岳山頂 横通岳から見た常念岳
横通岳から見た常念岳〜後立山(クリックで拡大)
横通岳から見た槍〜穂高(クリックで拡大)
横通岳から見た槍〜三俣蓮華岳(クリックで拡大)
横通岳から見た鷲羽岳〜大天井岳(クリックで拡大)
横通岳から見た立山、剣岳(クリックで拡大)
横通岳から見た常念岳〜穂高間の展望(クリックで拡大)

 踏跡のおかげでコマクサを踏み荒らすことなく山頂へと登っていく。既にハイマツも無く砂礫と石ころ、高山植物の斜面だ。傾斜が無くなってピークに到着するとケルンが積まれて三角点が立っていた。ここが横通岳山頂だ。立ち木はないので展望はバッチリ、常念乗越からは見えない立山や剣岳、後立山、そして三俣蓮華岳から鷲羽岳、水晶岳の稜線が断続的に見えていた。ただし手前の大天井岳が邪魔しているのですっきりとは見えない。日影が無く少し暑いが山頂でしばし昼寝をして時間をつぶした。

横通岳から戻ってきた 遠い側のテント場も賑わい始めていた

 稜線東側からガスが上がるようになり、日が陰ってきたのでテントの中に落ち着けるだろうと山頂を出発、まだ時間はお昼前で小屋から離れたテント場はガラガラだった(時刻が原因ではなく小屋近くのテント場案内看板が原因か)。テントに戻ると稜線東のガスは太陽の位置に届かず、頭上から強烈な日差しが照りつけてテント内は温室状態でとても中に入れず、傘を持って風通しの良い稜線に上がり、傘を差して日差しを避けて休憩。まだまだ上がってくる登山者は多く、幕営装備の人もポツポツ見られた。でも先週の3連休のような大混雑ではない。まあ、あれは特別かな。

 たまにガスが稜線を越えて日差しを遮るようになってからテントに移動したが、それでも大半の時間は日差しが降り注いだ、私がテントを張った場所はちょうど立ったハイマツの縁で、ハイマツの枝が張り出した下が日陰になっていて、石が転がり平坦ではないがマットを敷けばそこそこ寝心地はいい場所に変身、上半身はハイマツの影、下半身には傘を差して日影を作ってお昼寝タイムを楽しんだ。

 やがて槍穂方面で湧きあがった雲が上空を覆うようになり日差しが陰ってテント内に潜り込んだ。まだ雨が降る気配はないが、今日の天気予報では寒気が入って夕方から局地的な雷雨とのことで、強風に備えてテント設営時にまじめに張り綱を張ったしフライもかけておいた。ちなみに私のテントはゴアなのでフライが無くても浸水しないが、テントの撥水性が無くなっており雨が降って表面に水の膜ができるとテント内部の水蒸気が逃げられなくなってひどい結露となる。フライを張っておけばゴアの通気性が生かされて結露しないので、長時間の雨が予想される場合のみフライを使うようにしている。夕方になってポツポツと降り始め、やがて本降りの雨になった。幸い、雷が鳴ることはなく、夜まで断続的に雨が降ってきただけだった。強風が心配だったが風もないまま。ラジオの気象情報では乗鞍上高地地方に大雨警報、長野県に竜巻注意情報が出ていたのでビビったが、この付近は雷雲が避けてくれたらしい。夜になって空を見上げると薄雲の隙間から星が見えていた。明日朝は晴れてくれるだろうか。

 できれば常念山頂で日の出を迎えるべく3時に起床、4時出発。風は弱く気温は高め(+12,3℃)で最初からTシャツに半ズボンで歩きだす。もちろんザックの中には防寒着を満載だ。常念岳山頂への登山道には点々とヘッドランプの明かりが続いている。もう山頂近くまで登っている明かりが見えるが、たぶん蝶や大滝山方面への縦走組だろう。西を見ると槍の肩の小屋の明かりが明瞭に見える。常念山頂まで石が積み重なった登山道が続くので足跡が残らず、目印や石の積み重なり方でルートを判断していく。登山道以外を歩いても植生を傷つける心配はないし危険箇所も無さそうなので落石さえ起こさなければ問題ないとは思うが、後続まで変なルートに引き込んでしまう可能性もあるのでしっかりとルートをトレースしていく。

日の出前に常念岳山頂を目指す この肩の向こうが山頂
常念岳山頂 山頂到着と日の出が同時

 ライトを使ったのは20分程度で、岩稜帯で遮るものがないため明るくなるのも早かった。あとは日の出に間に合うかどうか。まあ、今回の目的は山頂で日の出を迎えることではなく山頂で展望を楽しむことであり、そのためには日の出直後よりある程度明るくなってからの方がコントラストが強くなるので、日の出の時に山頂にいる必要はない。気分的には山頂で日の出を迎えたいところだが。日の出と競争するように周囲が明るくなってきて、満員の山頂直下で日の出を迎えた。この日は東の空は雲が多く、山の向こうからではなく雲から太陽が上がってきた。

常念岳山頂 朝焼けの槍ヶ岳
常念岳から見た蝶ヶ岳方面 常念岳から見た霞沢岳と六百山
常念岳から見た穂高〜槍ヶ岳
常念岳から見た裏銀座〜後立山(クリックで拡大)
常念岳から見た後立山(クリックで拡大)
常念岳から見た裏銀座(クリックで拡大)

 常念岳の展望だが、言うまでもなく360度の大展望だ。槍穂は真正面に屏風のように聳え、穂高岳山荘や北穂山荘の屋根が見える。人間の姿までは見えないが、おそらく槍や奥穂のてっぺんは賑わっているのだろう。北鎌尾根が急激に高度を下げると向こう側が見えるようになり、双六岳から三俣蓮華岳、鷲羽岳、水晶岳、野口五郎岳と裏銀座の山々がずらりと並んでいた。大天井岳の右側には龍王岳から剣岳。それに重なって低い場所に烏帽子岳の姿。もっと右に視線を移すと針ノ木岳、蓮華岳から後立山が連なるが鹿島槍が大きすぎて五龍や白馬岳は隠れてしまっていた。

常念岳から見た妙高、火打(クリックで拡大)

 さらに右には雲海の上に雨飾山〜妙高山。

 楽しみにしていた東の展望だが、雲海の高さが高く志賀高原、四阿山、浅間さえ雲の中に隠れてしまっており日光の山も雲の下。北アから奥日光を見る機会は何度かあったがいつも雲海の下だなぁ。もしかしたら雲海が消える時刻になれば見えるのかもしれないが、そんなにのんびりしていると帰りの渋滞に巻き込まれてしまう。まあ、いつか見えることもあるだろう。

常念岳から見た八ヶ岳
常念岳から見た南アルプス(クリックで拡大)
常念岳から見た恵那山〜乗鞍岳(クリックで拡大)

 南に目を転ずるとまずは八ヶ岳。北八ッは雲に覆われているが天狗より南はすっきりと晴れている。富士山の右側には南アルプスがずらりと並んでいる。どこまで見えているかと思ったら池口岳どころか写真判定の結果、黒沢山まで見えていた。これだけ見えることも珍しい。というか、そんなところに注目している登山者はこの中でも私一人に間違いない。

常念乗越方向に下り始める 小屋が見えてきた

 充分展望を堪能して下山開始。展望を楽しむ前に長袖シャツ+ダウンジャケットを着て防寒対策していたが、歩き出しはまだ体温が低いままなのでその格好で下っていく。やがて体が温まりTシャツに変身、快調に下ってテント場到着。出発前に濡れたフライの水滴をタオルでふき取っておいたので概ね乾燥していたが、縁の方がまだ少し湿っていた。下山して着替え中に干せばいいか。テント本体はフライのおかげでほとんど濡れておらず、ひっくり返して底を乾かせばOKだった。

一ノ沢 下界は雲海

 下山は荷物も減ってザックが軽くなり快調。今日は日曜で登ってくる人は少ないかと思ったらそんなことはなく、昨日と同じくらいは登っていると思えた。下界は猛烈な暑さだろうが谷間はある程度標高が下がると雲海に突っ込み、その下は日陰になっているのでまだマシだ。とはいえ標高が落ちると気温が上がり100円ショップの扇が大活躍した。樹林の中なので麦藁帽子はあまり役立たない。汗をかくので時々現れる支流で汗を洗い流し水を飲み、ペットボトルは最後まで空のままだった。山の神を通過し、最後の沢で水浴びして車道終点へ。これから歩きだす人、車道を登ってくる人の姿も見えるが、今からだと暑そうだなぁ。

「公式」駐車場 私が車を置いた駐車場

 水浴びを済ませておいたので車に到着してからは濡れタオルで軽く体を拭くだけでOK、その間にフライは乾いてくれた。駐車場はパラパラ空きが見られたが行きよりもかなり台数が増加、人気の高さがうかがえた。今回は通常の週末なので、先週のように早くから渋滞が始まることもなく渋滞に巻き込まれることなく東京に戻れた。

 

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